江川蘭子 感想 (ネタバレあり)
プロットがある程度決まっていたとしても、リレー小説って難しそうなもんだが、乱歩の書く第一回からして完全ぶん投げというか、どうにかして世紀の妖婦の誕生を描きたいという意気込みだけは伝わってきた 再販本なだけあって、巻末に解説を書いてくれていて、当時の事情やなんかが知れたのは良かった
乱歩自身が「自分の名前をモジって妖婦役で登場させるのって我ながら悪趣味だよね〜」って書いてたらしくてウケてしまった
その後、現実世界に芸名江川蘭子も現れたそうで、また乱歩も見たことはある的なエピソードも笑った
乱歩って多作な印象だけど、書かない時は本当に書かないらしいことが書かれていて、そうなのか〜と。本人曰くリレー小説は「第一回なら書く」とのことだったので、他の作家との知名度差がどれほどのものなのかは知らんが、乱歩が初回を書いているだけで読む人はいたんだろう(そもそも自分もそうだし)
久々に古い本を読んだので、いろいろ言い回しが古めかしいというか……時代劇とは違って昔の現代劇の言葉遣いって異様に古臭く感じる 一番ニュアンスがわからなかったのは「ちょっ、君」みたいな「ちょっ」てのが作家を跨いで、複数の人物が言うのだけど21世紀青年にはイマイチ汲み取れなかった
一応あざみ団という闇組織と、蘭子を引き取った戸山翁の関係性がどうのみたいな推進力はあるものの、さすがに物語的なカタルシスがあるわけでもなく、何なら最後数ページで次の作家にとんでもねえ変化球をぶん投げて終わる人もいたりして割とカオスだった
突然「黄死病が!」が挿入されたりとかね
まあ企画が不思議な面は否めないけど、それにしても言い訳から入る作家はちょっとダセェなとおもったりした
それぞれの作家に味はあったけれど、夢野久作のターンきた時の「うわっ!段落なっっっが!!」と面食らう体験はよかった
しかし、その夢野をして自殺テッテレーオチだったのはまあなんか………
当時の奔放な女性像ってこういう感じなのかあ、という学びもあった